太陽面に蠢く物欲。
- 2014.08.19 Tuesday
- 18:34
<8月17日11:24:30撮影>
昼間はめずらしく快晴だったので、雲になやまされることもなくじっくりピントと波長をあわせてから撮影することができた。おかげで彩層面は結構細かいところまで写り、横1200ピクセルに縮小したこの画像では、分解能を活かしきれていない。こうしてみると、PSTの半分強の集光力ではあるが、全面をコリメート法で固定撮影する限りでは必要十分な性能である。
しかし、8ヶ月ほど使い込んでくると、この鏡筒にもいろいろと不満点は出てきた。ひとつは眼視性能で、附属の10mmアイピースでは像が暗く、プロミネンスまでは見えない。常用しているズームアイピースでも18mm22倍が限度だ。この倍率ではプラージュが複雑な形状をしているところまでは見えても、彩層表面はもじゃもじゃしている程度で、磁力線の流れまでは見えてこない。この辺がPSTに比べて評価が低くなる原因だと思われるが、撮影をメインと考えると特に不都合ではない。
次に、これは集光力の低さからくるものだが、プロミネンスを固定撮影するときに日周運動でぶれてしまうこと。現在の撮影条件は、ISO200で彩層面は-1/3EV補正の1/15sec、プロミネンスは+2EV補正の1/2secにしている。プロミネンス撮影を+1EVにするか、ISO400にすれば改善できるが、前者は淡い部分の描写が悪くなるし、後者は撮影途中での変更が煩雑になってしまう。ただ、どちらも我慢できないというほどではない。
一番気になるのが、エタロンフィルターの透過ムラである。LS35THaのメインフィルターは対物レンズ前にあり、フィルターを光学系途中に内蔵しているPSTより透過ムラが少ないという触れ込みだった。しかし、実際に撮影してみると、彩層面の片側が暗く翳ってしまう。彩層面の模様やダークフィラメントなどが一番良く写るのが翳る直前で、反対側では描写が甘くなってしまうので、フィルター位置の調節にはいつも悩んでしまう。プロミネンスのコントラストにも影響しているので、淡いプロミネンスの中には描出できていないものもありそうだ。
メインフィルターの透過ムラの原因は、たぶん透過域調節の方法にあると思っている。透過する波長はメインフィルターを傾けることで調節するが、枠の片側を板バネで鏡筒に固定して、反対側の押しネジを回して調節するようになっている。メインフィルターが傾くと、視野中心は良くても、斜めに入射する光線にとっては、方向によってフィルターの傾きに差が生じ、それが透過ムラになって現れているものと思われる。LUNTの調節機構は押しネジ式から空気圧調整式に徐々に置き換わってきており、LS35THaがカタログ落ちしてしまった今では、押しネジ式はLS60THaの最安機種にしか残っていない。透過ムラについてはLUNT自身も弱点だと認識しているということだろう。こうなると、空気圧式でも安価なLS50THaが気になってしまう。誠に困った物欲大佐である。