同じく診療報酬改定を取り上げた記事(一部を引用)
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Q 診療報酬とは何か
A 医療機関が保険で患者を診療した場合に受け取る代金。一部は患者が自己負担し、残りは健康保険の保険者が支払う。診療内容ごとに決まった点数(1点=10円)で計算される。診察や治療にかかる診療報酬本体と、医薬品や医療材料代の薬価に分かれ、おおむね2年に1度改定される。
Q どうやって決められてきたのか
A 診療報酬の改定は、政府が全体の増減の割合(改定率)を決め・・・(以下略)
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さすがに「診療報酬は医師の収入だそうだけど云々」といった頭の悪そうな記述はありませんでした。しかし、
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Q 日医の委員はなぜ排除されたのか
A 開業医が中核をなす日医は長年、診療報酬改定を開業医に有利に進めてきたとされる。病院勤務医の過酷な労働実態を背景に医師不足が深刻化し、長妻厚労相は診療報酬を病院に手厚く配分する方針を決め、実現への布石として、日医の影響力をそいだ形だ。
Q 勤務医の処遇改善策はこれまでなかったのか
A 2008年度改定でも最重要課題とされ、救急医療や産科、小児科には診療報酬が加算された。ただ、診療所の再診料を削り、勤務医対策の財源にする方針が日医の反発で見送られ、中途半端に終わった。
Q 再診料にどんな問題があるのか
A 再診料は、2回目以降の診療に、診療所710円、中小病院(200床未満)600円を請求できる。かかりつけ医としての役割を評価して診療所に手厚いが、患者の病院志向の高まりに加え診療所より割安とあって、病院に患者が集中する一因にもなった。
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このあたりはまだ認識不足です。
・まず、病院勤務の労働実態の悪化は、単純に医学部定員削減と医療の高度化への要求が原因であること。
・次ぎに、病院の再診料を増額しても、それが医師の待遇改善に直接繋がらない(おそらくは変わらない)こと。これは先のエントリーで書きました。
・日本は医療費の総額が国際水準よりおさえられており、診療所の再診料を削るとかなりの割合の診療所が経営破綻に至る。診療所が壊滅すれば病院診療も破綻するであろうことは容易に予想されます。病院と診療所の対立をはかる現在の政策は日本の医療を根本から破壊しつくします。
診療報酬を改訂するときには、厚生官僚は極めて巧妙な手口を使ってきます。前回改訂はマスコミに対する公式発表では0.02%だったかの増額と発表されていました。実際に、全診療科の全保険診療(診察料から各種検査、処置、手術、入院、食事等々)すべてを万遍なく1回ずつ算定すればそうなるのですが、実際にはそのようなことはありえません。
そして、たとえば外来管理加算、これは内科などで診察のみ、処置が発生しない場合に再診料だけでは赤字になるために認められた項目なのですが、これに「5分以上の医師による診察と説明を要する」という制限をつけて、算定できないようにしたりしています。これは中医協の審議を経たものではなく、官僚が勝手に付け加えた文言です。ここではあえて書きませんが、5分という数字の根拠も全くありません。だいたい、いちいち5分になるかどうか計っていれば診療の妨げになりますし、診療内容、説明の密度が全く考慮されていません。仮に電子カルテだったところで、忙しくなると診察を先に済ませてからファイルを開いて記載することもあるので、カルテ上の診察時間と実際の診察時間は対応していません。
他にも同じような制限や減額があれこれと加えられていますが、これらは全てこの外来管理加算のように、毎回繰り返し算定する項目に集中しています。結果、改訂後の医療機関の収入は役10%減、これは「手厚く算定された」はずの小児科や産科でも同じでした。これが「診療報酬0.02%増額」の実態です。
小泉改革時代の社会保障費抑制は、意図的に保険診療制度を破壊し、その後に外資系の民間保険を導入するというお得意の「民活」の構想に沿って行われていました。その結果が現在の惨状です。現厚労相の発言は、診療報酬総額の大幅増の必要性を語る一方で、病院向けの診療報酬増の財源には診療所向けの報酬減をあてるとも語っています。
民主党はこれまで野党らしく、自民の政策に対抗して耳に聞こえの良い方針をあれこれと発表してきたわけですが、与党となった今、それらの方針の整合性が問われています。それらの発言全てが実現できるとは国民も思っていないでしょうから、すべてを盛り込んで国債で沈没といったような事態だけは避けていただきたいものです。